お初のカテゴリにて投稿でございますよ。
えーまあどういうことかと申しますと、
過去シリウス様のサイトで公開していただいていた、
『めいどさん★すぴりっつ!』の発売一周年記念SSのほうを、
こちらでも編集の上、再公開させていただきますーという感じです。
すごいタイムラグ! 初出2007年!
というわけで、プレイされてない方々にはなんのことやらな上、
当然のごとくクリア前提のネタバレまくりなものじゃございますので、
そちらご了承の上で下記ボタンからでなにとぞよろしくお願いいたします。
上で触れたとおり再公開に当たって多少調整を入れてはおりますが、
内容自体には変化ございません。
キャラごとに色分けとかをやめてしまったので
多少アレかもですが、必要以上に手を入れたくないんで
ごりょうしょうください6年以上前のはじっくり見るのツラいー!
ともあれそんな感じで↓
えーまあどういうことかと申しますと、
過去シリウス様のサイトで公開していただいていた、
『めいどさん★すぴりっつ!』の発売一周年記念SSのほうを、
こちらでも編集の上、再公開させていただきますーという感じです。
すごいタイムラグ! 初出2007年!
というわけで、プレイされてない方々にはなんのことやらな上、
当然のごとくクリア前提のネタバレまくりなものじゃございますので、
そちらご了承の上で下記ボタンからでなにとぞよろしくお願いいたします。
上で触れたとおり再公開に当たって多少調整を入れてはおりますが、
内容自体には変化ございません。
キャラごとに色分けとかをやめてしまったので
多少アレかもですが、必要以上に手を入れたくないんで
ごりょうしょうください6年以上前のはじっくり見るのツラいー!
ともあれそんな感じで↓
------------------------------------------------------------
日だまりの、ゆれる音
保住圭
------------------------------------------------------------
愛しい、愛しいその人が、日だまりの中で揺れていた。
その光景に、フィエナは胸がいっぱいになる。
だから彼女は、揺り椅子で眠っている夫へ、静かに静かに歩み寄る。
歩み寄らずとも“見る”ことは出来たけれど、どうしてもどうしても、そうしたかった。
そして、のぞき込む。
お腹のあたりに開いた本を伏せ、熟睡している旦那様。
目にした途端、思わず吐息が漏れてしまった。
先ほどいっぱいになった胸が、今度はきゅうぅ……となってしまった。
「おかあさまぁ」
「とーさま、寝てる?」
「あら……」
いつの間にか来ていたらしい。双子の娘が、フィエナのスカートの両側から、ひょこっと父をのぞき込んだ。
「寝てるねー、気持ちよさそう、えへー」
笑み崩れ、上の娘は体をくねらせる。顎の高さで切りそろえられた髪が、きゃあきゃあという身動きの度に翻る。
「キャロル、お声、おおきいよう。おとうさま、起きちゃう……」
下の娘は反対側から姉に向けてささやく。両側でくくった彼女の髪の房も、焦れるような身じろぎの度に翻っていた。
「ノエルこそうるさいのー。リーチェ姉、うれしいときは笑うんだよーって、言ってたもん」
「わたし、うるさくないもの……クオねえさまにも、品があるってほめられたもの……」
「昔はノエルの方がいたずらっ子だったのにー。あたし、知ってるもんねー」
「知らない。今は、キャロルよりわたしの方が大人なんだもの」
「はいはい、キャロルもノエルも、静かにね……」
二人の髪を優しく撫でて、フィエナは再び、夫を見つめる。
娘たちもそれに倣い、母のスカートを掴みながら、静かに父の寝顔に見入った。
きし……きし……と揺り椅子のきしむ音。
それすら、フィエナには愛しくてたまらなかった。
午睡は、最近の夫の日課だった。
毎日、昼食を終えると小一時間ほど、こうして窓辺で揺られて眠る。
それもこれも、二人の娘が手作りの揺り椅子をプレゼントしたからだ。
二人は、父に抱き上げられて、ゆらゆらと揺らされるのがお気に入りだった。
活発なキャロルはもちろんのこと、日頃おすましさんなノエルも、そのときばかりはきゃっきゃと喜んで大騒ぎするほどだ。
嬉しいから、自分たちもしてあげたい。とーさまを、おとうさまを、ゆらゆらしてあげたい。
だけど、ふたりともそんな力はない。どうしたらゆらゆらしてあげられるんだろう?
「そんじゃあ、あんたたちで揺り椅子作って、大家さんにプレゼントするっていうのは?」
「いいねいいねー! じゃあ私、適当に、材木のあまりとか詰め所からもらってくるよー」
「よいですね。幸い、わたしは手先が器用です」
「もちろん、アヤリ姉ちゃんも手伝ったげる」
「じゃあ、このシャロねえさまは、設計図を書いてあげますのです。えへへ、これはちょっと、この中ではわたしにしか出来ない高等技術なのです~」
妹分の相談に、店子たちは素晴らしく親身に応えた。
小さな二人につきあって、カンナやノコギリを振るっている店子たちに、フィエナは何度頭を下げたか知れない。
すみません、娘たちのわがままで……!
店子たちは皆、笑うばかりだった。
とりあえず、“旦那様”には内緒にしておいてね。
そう言われてしまえば、フィエナは涙ぐむばかりだった。
ただ……旦那様に隠し事をするのは、彼女にとって最難関と言っていいくらいの難事であったのだけれど。
「ふわ~あ……」
「……ふぁ」
キャロルとノエルが、ほぼ同時に欠伸をした。
視線をやると、そろって船を漕いでいた。揺れる父を見ているうちに、自分たちも眠くなってしまったらしい。
てこてこと、ゆっくり父へ歩み寄る。
キャロルは右手、ノエルは左手、二人一緒に、父の手に触れた。
彼女たちの願いはすぐに叶った。
「ん……」
眠っていても応えてしまう父は、眠ったまま、二人の娘を抱き寄せた。
「えへ……」
「……んふ」
大好きな父親の腕の中に収まって、娘たちは、安心しきった表情で目を閉じた。
すぐに寝息を漏らし始める。
フィエナはくすっと笑ってしまう。結局、いつもこうだった。
目を細め、見つめる。
日だまりと、眠る父子。
皆で作った揺り椅子。
穏やかで、優しい呼吸。
きし……きし……と揺り椅子はゆれる。
そこに、愛しい全てがあると……
「……」
フィエナの瞳は毎日潤む。
「……おやすみなさい」
洗濯物を取り込んで、夕食の準備。今日は旦那様の好きなものにしよう。
考えながら、ゆっくり、その場をあとにした。
“床”はもちろん、その動きのままに。
日だまりの、ゆれる音
保住圭
------------------------------------------------------------
愛しい、愛しいその人が、日だまりの中で揺れていた。
その光景に、フィエナは胸がいっぱいになる。
だから彼女は、揺り椅子で眠っている夫へ、静かに静かに歩み寄る。
歩み寄らずとも“見る”ことは出来たけれど、どうしてもどうしても、そうしたかった。
そして、のぞき込む。
お腹のあたりに開いた本を伏せ、熟睡している旦那様。
目にした途端、思わず吐息が漏れてしまった。
先ほどいっぱいになった胸が、今度はきゅうぅ……となってしまった。
「おかあさまぁ」
「とーさま、寝てる?」
「あら……」
いつの間にか来ていたらしい。双子の娘が、フィエナのスカートの両側から、ひょこっと父をのぞき込んだ。
「寝てるねー、気持ちよさそう、えへー」
笑み崩れ、上の娘は体をくねらせる。顎の高さで切りそろえられた髪が、きゃあきゃあという身動きの度に翻る。
「キャロル、お声、おおきいよう。おとうさま、起きちゃう……」
下の娘は反対側から姉に向けてささやく。両側でくくった彼女の髪の房も、焦れるような身じろぎの度に翻っていた。
「ノエルこそうるさいのー。リーチェ姉、うれしいときは笑うんだよーって、言ってたもん」
「わたし、うるさくないもの……クオねえさまにも、品があるってほめられたもの……」
「昔はノエルの方がいたずらっ子だったのにー。あたし、知ってるもんねー」
「知らない。今は、キャロルよりわたしの方が大人なんだもの」
「はいはい、キャロルもノエルも、静かにね……」
二人の髪を優しく撫でて、フィエナは再び、夫を見つめる。
娘たちもそれに倣い、母のスカートを掴みながら、静かに父の寝顔に見入った。
きし……きし……と揺り椅子のきしむ音。
それすら、フィエナには愛しくてたまらなかった。
午睡は、最近の夫の日課だった。
毎日、昼食を終えると小一時間ほど、こうして窓辺で揺られて眠る。
それもこれも、二人の娘が手作りの揺り椅子をプレゼントしたからだ。
二人は、父に抱き上げられて、ゆらゆらと揺らされるのがお気に入りだった。
活発なキャロルはもちろんのこと、日頃おすましさんなノエルも、そのときばかりはきゃっきゃと喜んで大騒ぎするほどだ。
嬉しいから、自分たちもしてあげたい。とーさまを、おとうさまを、ゆらゆらしてあげたい。
だけど、ふたりともそんな力はない。どうしたらゆらゆらしてあげられるんだろう?
「そんじゃあ、あんたたちで揺り椅子作って、大家さんにプレゼントするっていうのは?」
「いいねいいねー! じゃあ私、適当に、材木のあまりとか詰め所からもらってくるよー」
「よいですね。幸い、わたしは手先が器用です」
「もちろん、アヤリ姉ちゃんも手伝ったげる」
「じゃあ、このシャロねえさまは、設計図を書いてあげますのです。えへへ、これはちょっと、この中ではわたしにしか出来ない高等技術なのです~」
妹分の相談に、店子たちは素晴らしく親身に応えた。
小さな二人につきあって、カンナやノコギリを振るっている店子たちに、フィエナは何度頭を下げたか知れない。
すみません、娘たちのわがままで……!
店子たちは皆、笑うばかりだった。
とりあえず、“旦那様”には内緒にしておいてね。
そう言われてしまえば、フィエナは涙ぐむばかりだった。
ただ……旦那様に隠し事をするのは、彼女にとって最難関と言っていいくらいの難事であったのだけれど。
「ふわ~あ……」
「……ふぁ」
キャロルとノエルが、ほぼ同時に欠伸をした。
視線をやると、そろって船を漕いでいた。揺れる父を見ているうちに、自分たちも眠くなってしまったらしい。
てこてこと、ゆっくり父へ歩み寄る。
キャロルは右手、ノエルは左手、二人一緒に、父の手に触れた。
彼女たちの願いはすぐに叶った。
「ん……」
眠っていても応えてしまう父は、眠ったまま、二人の娘を抱き寄せた。
「えへ……」
「……んふ」
大好きな父親の腕の中に収まって、娘たちは、安心しきった表情で目を閉じた。
すぐに寝息を漏らし始める。
フィエナはくすっと笑ってしまう。結局、いつもこうだった。
目を細め、見つめる。
日だまりと、眠る父子。
皆で作った揺り椅子。
穏やかで、優しい呼吸。
きし……きし……と揺り椅子はゆれる。
そこに、愛しい全てがあると……
「……」
フィエナの瞳は毎日潤む。
「……おやすみなさい」
洗濯物を取り込んで、夕食の準備。今日は旦那様の好きなものにしよう。
考えながら、ゆっくり、その場をあとにした。
“床”はもちろん、その動きのままに。
| ホーム |